Vアーティストによるリアルライブ『AWA UPSTREAM 2024 AUTUMN』ライブレポート
定額制音楽ストリーミングサービス「AWA」主催によるライブイベント『AWA UPSTREAM 2024 AUTUMN』が、2024年10月19日(土)に秋葉原エンタスで開催された。AWA UPSTREAMは、AWAをメインに活動する配信者を始め、幅広いフィールドで音楽活動を展開するアーティストが集結するライブイベント。今年の5月に開催された『AWA NEXT STAGE LIVE』同様、ライブ出演権を勝ち抜いたアーティストが多数出演。今回の出演者である、七海うらら、陽月るるふ、かしこまりに加えて、AWA配信者の夢羽ヒメ 、キカザル、繭糸、雛森さくら、EMUNEKOの計8名による大ボリュームのライブの様子をレポートする。
かしこまり
トップバッターで登場したのは、今年で活動7年目を迎えるかしこまり。開幕、『ルーティン』の爽やかなイントロに合わせて、「今日はエンタスに来てくれてありがとう!」と勢いのあるマイクパフォーマンスで会場は熱気に包まれていくのがわかった。そして、持ち前の力強いボーカルと躍動感のあるステージングで、オーディエンスは手を振り上げながらもかしこまりのパフォーマンスにロックされていく。そのまま『3分後に恋が叶う唄』で、緩やかなポップソングが展開されながらも、感情的で元気づけられるような歌声が鳴り響いた。
軽くMCを挟んだ後は、『virtual cinema』を披露。再びアップテンポな楽曲が流れ出し、オーディエンスは自然と身体を揺らし動かしていく。「ちゃんまりを今日初めて見た人も、声出して楽しんでいってよ!」と、曲の合間に煽りをピンポイントで入れていくのはさすがとしか言いようがなかった。初めてライブを見る人にも印象付けるような気遣いや、アピールの仕方はこれまでライブを重ねてきた経験値でもあり、アーティストとしてのスタンスだろう。鋭いバンドサウンドナンバーから一転、ピアノの音色が心地よい『おさんぽたいむ』を披露。そして、ここからはラストスパートと言わんばかりの『Statice Letter』『アイム ユア ビタミン』とパワフルな楽曲、パフォーマンスが怒涛のように展開された。「みんなの元気になれますように!」と、元気全開の歌声とメッセージ性が、例え初見だったとしても伝わるようなライブを見せてくれた。
<セットリスト>
1. ルーティン
2. 3分後に恋が叶う唄
3. virtual cinema
4. おさんぽたいむ
5. Statice Letter
6. アイム ユア ビタミン
夢羽ヒメ
ライブのインターバルには、今回AWA UPSTREAMのライブMCを務める朔とせいちゃんがパフォーマンスの感想や紹介を語りつつ、イベントや出演者の解像度を上げてくれていた。そんなMCの2人から「AWA UPSTREAMに出るためにAWA配信者になった」という驚きの紹介がなされて登場したのは、見習い天使Vtuberの夢羽ヒメ。最初に披露したのは、自身の歌ってみたでも以前に投稿もされていた『ワールドイズマイン』。もともとの可憐な声質と楽曲の雰囲気に合わせた少し妖艶な歌い方や声質を上手く使い分けており、楽曲へのリスペクトを強く感じるパフォーマンスだった。
MCでは、自分の活動についてやAWA UPSTREAM出演までの経緯など、色んな話をしながら会場とコミュニケーションをとっていく姿が印象的だった。その後、『Reborn』『白く咲く花』『HANAJI』と幅広い楽曲を歌い上げていった。個人的には、歌唱の時と合間の煽りとのギャップが凄まじく、別人なのではないかと思ってしまうほど、パフォーマンスの格好良さとトークの可愛らしさが際立っていた。限られた時間の中で自分の夢を語る場面もあれば、オリジナルのMVを背景に好きな楽曲を濃密に歌い上げていく。カバー楽曲オンリーでもとことん個性を発揮していた光景を見ると、いつかオリジナル楽曲のライブも見てみたいと思えるような時間だった。
<セットリスト>
1. ワールドイズマイン
2. Reborn
3. 白く咲く花
4 . HANAJI
キカザル
3番目に登場したのは、自身で作曲も手掛けるシンガーソングライターのキカザル。メイド喫茶からのエンタス出演という斬新な映像演出を交え、開幕『Damn』を披露。静かに展開されていく楽曲に合わせて、自身のテンション感も沸々と上げていくパフォーマンスは圧巻だった。声量や声のトーンで感情の起伏を上手く表現していて、聴いている側としてはライブへの没入感が時間が経つほどに上がっていった。そこから『現』『main actor』『ダーウィンの海』と、オリジナル楽曲とカバー曲を織り交ぜながら幅広いジャンルをなんなく歌いこなしていく。
歌唱力の高さは言わずもがな、低音と高音の使い分けがとにかく素晴らしい。生ライブという舞台でも臆することなく、自身のポテンシャルを発揮しているように思えた。男性の曲はとことん低音を使い分け、オリジナル楽曲は擦り切れるような声が印象的で、感情を全面に押し出すような歌唱が光った。生ライブでしか得られない没入感に浸っていると、ライブ終盤の『睡魔召喚』ではポップなサウンドが会場を包み込み、心地よい空間が広がっていた。ラストに披露したオリジナル楽曲は、優しいギターの音色とは裏腹に、力強いキカザルの歌声が絶妙に噛み合っていた。最後に「皆さんがこれからも素敵な音楽に出会えますように」という印象深い言葉を残し、キカザルのライブパフォーマンスが終演した。
<セットリスト>
1. Damn
2. 現
3. main actor acoustic ver.
4. ダーウィンの海
5. 睡魔召喚
6. タイトル未定 with 乃子
繭糸
「身体揺らして、楽しんでいきましょう~!」という掛け声と共にパフォーマンスを披露したのは、シンガーソングライターでVsingerの繭糸。最初に披露した『ほしの記録』では、緩やかで朗らかなポップソングに優しい歌声が交差する楽曲で、会場が一瞬にして繭糸の世界観に満ち溢れた。1曲目を歌い終えると、先ほど出演を終えたキカザルが登場し、『つまんない世界』を披露。配信でリスナーと悪ノリで決めたというコールを決めつつ、コミカルな側面とキャッチーなメロディに加え、2人のハーモニーに圧倒される楽曲だった。
そして3曲目はクールダウンという意味を込め、『夜明かしの旅feat.繭糸』を披露。実際には、クールダウンとはほど遠い、熱量の高いバラードソングが会場内を包み込んだ。サビで一気に感情的に表現された高音ボイスは圧巻で、バラードソングであろうと思わず身体が動いてしまう。そして、続いて披露した初のオリジナルソング『平凡な日が終わるころ』は、軽快なポエトリーと馴染みやすいメロディが絶妙に噛み合った楽曲。聴いていて心が躍るような感覚になってしまう不思議な時間だった。MCも短めに、最後に披露したのは『つづく、つづく』。個人的には繭糸自身の歌声やアーティストとしての世界観とマッチしたナンバーだと感じた。優しさというベースの中に、要所要所で力強さを感じる歌唱は、一度聴くと癖になってしまう不思議な魅力を感じた。
<セットリスト>
1. ほしの記録
2. つまんない世界 / キカザルfeat.繭糸
3. 夜明かしの旅feat.繭糸 / 流星のサイトシーイング
4. 平凡な日が終わるころ
5. つづく、つづく
雛森さくら
この日会場を1番桜色のペンライトで染めた雛森さくらが登場。人生初のリアルライブとは思えないほど、堂々としたパフォーマンスを終始披露していた。緊張しながらもMCでは楽しいというワードが飛び交っていて、とにかく楽しもうという姿勢が見ているだけでも伝わってきた。その言葉通り、開幕から『Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~』『気まぐれメルシィ』と、アッパーな楽曲を披露していく。季節感のある楽曲も織り交ぜながら、会場では曲に合わせてペンライトが縦横無尽に暴れまわる光景が印象的で、ライブ特有の高揚感が溢れていた。
そして、初のオリジナル楽曲『さくらりりかる』を披露。まさに雛森さくららしさを詰め込んだ楽曲になっており、自己紹介ソング的な側面を持ち合わせつつ、キャッチーでライブ映えする楽曲だった。「ペンライトをブンブン振り回したくなる曲は何?というのをリスナーさんに聞いた」とMCで語っていた通り、後半には『ダダダダ天使』『アイドル』『サインはB -New Arrange Ver.』と、盛り上がり必至のキラーチューンが怒涛のように披露されていった。「終わりたくない!」と吐露に近いような言葉も飛び交い、コールもそうだが、間奏で煽りをしっかり入れていく姿は、初のリアルライブとは思えないレベルのパフォーマンスで、同時に本当に歌うことが好きなんだなと感じることができるライブだった。
<セットリスト>
1. Crazy Party Night ~ぱんぷきんの逆襲~
2. 気まぐれメルシィ
3. さくらりりかる
4. ダダダダ天使
5. アイドル
6. サインはB -New Arrange Ver.
EMUNEKO
サイバーな映像とともにライブがスタート。『AWA NEXT STAGE LIVE』にも登場したEMUNEKOがライブと同時に会場を盛り上げていく。1曲目に披露した『Luciola-ルシオラ-』は、まさに開幕に相応しいアッパーなナンバーで、オーディエンスを一気にロックした。流暢なMCを終えると、ここから初出しとなる『ねこ涅槃-踊にゃんせver.-』『星座になれたら』を2曲続けて披露した。独創的なアレンジの『ねこ涅槃-踊にゃんせver.-』と、色とりどりのペンライトが空間が広がる『星座になれたら』は、映像演出も相まって思わずステージングに釘付けになってしまうほどの迫力と斬新さが光っていた。
「カロリー高めの2曲を持ってきました!」とMCで語っていた通り、自然と身体が動いてしまうほどのパワーを持った楽曲が展開された。『Melty Lip』はとにかくキャッチーで、少し大人っぽい声色が印象的なナンバー。思わず口ずさんでしまうほどのメロディの魅力が溢れていて、会場からは大きな声援が飛び交っていた。そして最後の『地球最後の告白を-Symphonic Rock Arr.-』は、EMUNEKOの歌唱力が存分に発揮された楽曲。激しいながらもエンディング感のある壮大な楽曲で、この日1番感情を込めて歌っているのがわかるくらい、歌いだしから力のある歌声が会場に鳴り響いた。MCも含め、ライブパフォーマンスも堂々とした立ち振る舞いが印象的で、これからアーティストとしてどこまで飛躍していくのか期待が膨らむ時間だった。
<セットリスト>
1. Luciola-ルシオラ-
2. ねこ涅槃-踊にゃんせver.-
3. 星座になれたら
4. Melty Lip
5. 地球最後の告白を-Symphonic Rock Arr.-
陽月るるふ
爽快なバンドサウンドが鳴り響くのと同時に、陽月るるふの透き通る歌声が切り込んでいく。「今日はみんな盛り上がっていくぞー!」という叫びと共に、オーディエンスも掛け声を上げていく。1曲目『Glory sun』を力強く歌い上げると、続いて『メルト』を披露。曲のコールと同時に大きな歓声が会場に鳴り響いていたのが印象的で、そんな声援に応えるように陽月るるふも丁寧に歌いこなしていく。そして続いては3Dお披露目で初披露した『クラルテ』で、会場内を一気に穏やかな空気に変貌させる。全員で手を大きく振り上げる姿は圧巻で、楽曲を通じて会場の一体感が強くなった瞬間だと感じた。楽曲のジャンル問わず、曲のテンションに合わせてサイリウムがずっと揺れ動いているのも印象的だった。
そして、最後に披露した『朝焼けのとなりに』は、この日が初披露というサプライズ。「この曲を歌うことを楽しみにしていました!」と語っていた通り、聴き心地の良さはもちろん、その前に陽月るるふ自身も楽しんで歌っているのがひしひしと伝わるパフォーマンス。楽曲の構成もそうだが、透き通る歌声をベースに、サビでは一気にパワフルに歌いこなしており、全体を通してメリハリのあるナンバーだった。終始、初のリアルライブ出演とは思えない堂々たるステージングで、トリの七海うららにバトンを繋いだ。
<セットリスト>
1. Glory sun
2. メルト
3. クラルテ
4. 朝焼けのとなりに
七海うらら
『AWA UPSTREAM 2024 AUTUMN』のトリを飾ったのは、リアルとバーチャルを行き来するパラレルシンガーの七海うらら。そして先ほど出演した陽月るるふが登場し、この日だけのコラボライブというスペシャルな空間が開幕から展開された。コラボでは、『ルンがピカッと光ったら』を披露し、息の合ったハーモニーが飛び交う。リズミカルに2人でステップを踏み、ハモリのパートも綺麗な歌声が重なり合った。曲が終わると、七海うららソロのステージがスタート。「今年夢が1つ叶いました。アニメのオープニング主題歌を務めさせていただきました!」と、『感情革命ロックンロール』を披露。アッパーチューンにオーディエンスとの掛け声が鳴り響き、迫力のある光景が広がっていた。
そして間髪入れずに『Trigger』を披露。休む暇を与えないかのようにアッパーな楽曲が続く。MCでは、これまでの活動の軌跡を少し紹介しつつ、11月20日にリリースする1stフルアルバムについて語っていく。その中でまだリリースされていないアルバムの表題曲『Kiss and Cry』を初披露。楽曲自体のパワーもさることながら、自らが作詞をしたというメッセージ性の強さも一度聴いただけでわかるほどの没入感があった。そして続いては生粋のバラードソング『茜光』が披露され、オーディエンスの情緒をくすぐるかのようにギャップのあるセットリストが続いていく。ライブも終盤、ここからラストスパートが展開されていく。七海うららの人気ナンバー『キワメテカワイイ』は、可憐さが飛び交うポップソングで、間奏部分で掛け声が飛び交った。そして最後はまさかのコラボのおかわりが実現。サプライズで陽月るるふが再び登場し、『ライオン』を歌い上げた。
<セットリスト>
1. ルンがピカッと光ったら w/ 陽月るるふ
2. 感情革命ロックンロール
3. Trigger
4. Kiss and Cry
5. 茜光
6. キワメテカワイイ
7. ライオン w/ 陽月るるふ
全8組が躍動する『AWA UPSTREAM 2024 AUTUMN』は、前回開催されたAWA NEXT STAGE LIVE同様に、多種多様な音楽が飛び交うライブイベントだった。ジャンルは違えど、とにかく音楽が好きで、自分自身がライブを楽しもうとする姿が全てのパフォーマンスから感じ取ることができた。また、オーディエンスも出演者に同調するように、ライブを楽しんでいる姿が印象的で、音楽を通じてアーティストとファンが繋がるような画期的なイベントだった。
取材&文:森山ド・ロ