東京、世田谷を拠点に活動するヒップホップ・グループ、KANDYTOWNのビートメイカー/プロデューサーのMIKIがファースト・ソロ・アルバム『137』を先月の4月にリリースした。MIKIはKANDYTOWNの代表曲「R.T.N.」や「Paper Chase」を手掛けるなど、活動は多岐に渡る。そして、昨年12月には同クルーのラッパー、IOと、ニューヨークのレーベル Duck Down Music に所属する Raz Fresco(ラズ・フレスコ)を客演に迎え、デジタルシングル「Oversea ft. Raz Fresco, IO」を先行リリースし、大きな話題となった。この楽曲を含む計13曲のアルバム『137』のリリースに合わせ、MIKIが作ったプレイリスト「NOW PLAYING」をAWA公式アカウントで公開し、少し話を聞いた。
アルバムのタイトル『137』という言葉には、どんな意味が含まれているのだろうか。
「今って宇宙ができて137億年らしくて。137億年の結果、“今”っていう意味を込めました。ジャケットの写真は3歳の頃の自分ですね。95年のときです」
このジャケットは、多くのアートワークを手がける、イラストレーター/グラフィックデザイナーの上岡拓也氏がデザインしたもの。ソロアルバムはいつから出そうと考えていたのか。
「音楽始めたときから、ソロアルバムは出したいって思ってました。プロデューサーの人ってコンピレーションアルバムとか出すじゃないですか。おれもそれをやりたかったんです。けど、出すなら、玄人のヘッズに納得してもらえる作品にしたかったんで、半端なものにはできないなと。周りのアーティストで、リリース日を設定して、焦って作るのを見てたりもしたんで、そういう風には出したくないなって。納得いくものに仕上がってから、リリース日とかは考えたいって思ってました。今年で26歳なんですけど、本当はこれを21、22歳くらいで出したかったですね。クオリティを求めたら5年かかっちゃいました(笑)」
MIKIがとにかくクオリティを求めたというだけあって、アルバム『137』はドープ・シットに違いない。MIKI自身、誰も知らない音楽を追い求めていたヘッズだったことから、玄人ヘッズが求めてるものを理解した作品になっているんだと思う。フィーチャリングゲストには IO、Ryohu、MUD、Dony Joint、DIANをはじめとするKANDYTOWNのメンバーのほか、NIPPS、B.D.、仙人掌、BES、今年2月に死去したFebb As Young Mason(Fla$hBackS)らが参加と、豪華すぎるメンツが揃っている。
「おもしろいっすよね。おれもそう思います(笑)。Febbとは昔から交流があって。お互いの実家に泊まりあったりする仲でしたね。NIPPSさんは、おれのお母さんと同い歳でした(笑)。あの年齢になっても、あの人しか書けないような歌詞で、もう最高ですよね。仙人掌さんは、Febbが繋いでくれたんですよ。Febbの『Yellow x Black』のPVで、なぜか、おれと仙人掌さんがピックアップされて。そのときに初めて話したんですけど、めちゃくちゃ良い人で。それで今回のアルバムで、いっしょに曲作りたいですってお願いしました。仙人掌さんと作るならBESくんだなって思いましたね。BESくんは刑務所から出所してきた日に、おれが働いてる渋谷の服屋に遊びにきたんですよ。塀の中でKANDYTOWN聴いてましたって言ってくれて。いやいや、おれは昔からBESくん聴いてましたよって感じで(笑)」
アルバム『137』の客演には国内問わず海外から、ニューヨークのRaz Fresco、ブルックリンの女性ラッパー Chelsea Reject (チェルシー・リジェクト)もフィーチャリングゲストに名を連ねている。Raz FrescoとChelsea Rejectとの出会った経緯はなんだったのだろうか。
「Razは、あいつが17歳のときからYoutubeでチェックしてて、超かっこいいので一緒に曲作れたらなーと思ってたんです。なので日本に来るタイミングに、コンタクト取って。そのときにChelseaも来てて、そこで出会いました。話したら良いヤツで、一緒にスタジオ入ったんですけど、ヤツらとのレコーディングは早かったすね。RazとChelseaが20分でリリックを即効書いて、20分でレコーディングして。やっぱ向こうのラッパーは書くのが早いっす。KANDYTOWNでいったら、MUD、GOTTZ並です。12曲目の『Raindrops』はニューヨークのつんとした雨をイメージしたんですが、Chelseaがばっちり決めてくれてましたね」
MIKIから見て、アルバム『137』は5年前の作り始めたときに比べて、仕上がりが違うものになったり、初めてアルバムを作る上で大変だったことはなかったのか。
「楽曲自体は変わっていますが、やろうとした意図は変わらなかったですね。途中からBESくんが入ったりとかはありましたけど。1曲目の『A Film Music』、7曲目の『No Wave』は全部弾きでやったり、3曲目のMUDとの『Problems』はバンドとやったりとか、とにかく楽しかったですね。最初は実費でやってたので、それが大変でした(笑)。周りの人のおかげでなんとか出来上がりましたね」
アルバム『137』のリリースに合わせ、AWA公式アカウントにMIKIが作ったプレイリスト「NOW PLAYING」も公開された。プレイリストを作った感想を聞いてみた。
「プレイリストは初めて作りました。今回は最近聴いたのをピックした感じですね。昔からの曲とか選び出したら、きりがなくなってきちゃって。昨日の夜中もひとりでやってみたんですよ。紙2、3枚分くらい作っちゃって、ダメだって思いました(笑)。ロックでまとめたり、ソウルでまとめたり。今回作ったのは、ヒップホップ多めで、R&Bも入ってますね。プレイリストに入れた6ix9ineは待ってました!って感じですよね。M.O.P.やDMXとかのシャウト系のラップ好きなんです。アルバム『137』の楽曲からも『¥en』と『Raindrops』を入れたんですけど、『¥en』のビートはFebbと作ったやつなんですよ。この2曲は違和感ないかなって思って入れましたね。あと、おれの一押しは、Mahaliaです。最近いちばん好きなんですよ」
プレイリスト「NOW PLAYING」は、MIKIが最近聴いている楽曲を集めたということなので、ぜひチェックしてほしい。音楽ストリーミングサービスに対しては、正直どう思ってるのか。
「音楽が広まるって意味で良いことだと思います。結局、なにやっても良いことと悪いことってあると思うんで。たくさんの人がいくらでも聴けるってのが良いですよね。悪いことはアーティストに還元されてるのかなって。けど、ちゃんと還元されてるっぽくて安心しました(笑)」
最後に今後の展望を聞いてみた。
「2枚目をもう作ってます。9曲くらいできてて、1曲はレコーディング終わりましたね。ちょっと、いろいろあって来年ですかね(笑)。2枚目もヘッズが聴いて納得できるものにしたいっす」
Credits
Text:Toru Miyamoto
Photo:Toru Miyamoto