東郷清丸がAWAでプレイリストを公開。「ワクワクすることだけをやって生活したいっていう理念のもとで生きてるところ」

東郷清丸(トウゴウキヨマル)がAWAでプレイリスト『BEATS』を公開した。

東郷清丸は1991年横浜生まれ。16歳頃から作曲を始め、童謡からポップス/ロック/ブラックミュージック/ラップなどの音楽のみに留まらず、人の会話や虫の鳴き声や車のエンジンや換気扇の回る音にいたるまで、耳に入るもの全てに感銘を受けながら音楽表現に取り組むシンガーソングライター。2017年1月、自宅にて制作した「ロードムービー」をsoundcloudに公開し活動をスタートした。同年3月に「TOKYO BIG UP!オーディション」最終選考出場し、ライブ審査にて特別審査員の中尾憲太郎/ 松田“CHABE”岳二/MC.sirafu各氏に絶賛され審査員特別賞を獲得。2017年9月、自らの勤めるデザイン/活版印刷を軸とした会社Allright内に新たなレーベル”Allright Music”を立ち上げ、11月に1stアルバム「2兆円」をリリース。この作品が“APPLE VINEGAR AWARD”ノミネート10作品に選出される。2018年7月、フジロックにてROOKIE A GO-GOに出演し、翌年のメインステージ出演をかけた選考の会場投票で1位を獲得した。そして、2019年5月に2ndアルバム「Q曲」をリリース。そんな東郷清丸にAWAでプレイリストを作ってもらい、話を聞いた。

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- 東郷清丸さんのことを調べれば調べるほど、近づいてるようで新たな謎が増えていきます。あえて自分の口から東郷清丸とは何者なのかを教えてください。

東郷清丸 - 音楽をやるシンガーソングライターでもあるんですけど、シンガーソングライターを目指してやってるわけでもないんです。僕は自分がワクワクすることだけをやって生活したいっていう理念のもとで生きてるところで。好きなことならなんでもいいっていうか、もともと音楽を作るのも、ライブをするのも好きだから、今はそれを最大限にやっています。けど、ずっとこの思想で生きてきたわけではなくて、今のAllrightという会社に入って、いっしょにグラフィックデザインをしている髙田唯さんの生き方に感化されて、自分もそうありたいって思うようになったんです。これまでの自分の人生を振り返ってみたら、誰かに止められてでも、影でコソコソやっていたのは音楽で。止められてでも、やっていたっていうのは強い欲求があるからだと思うんです。受験だから勉強に集中してとか、社会人1年目だから仕事に集中してとか。そういうタイミングで自分を押さえつけてたんですけど、それを外して自分のやりたいことをやらせてあげたい。音楽は自分でも分からないくらいの強い動機でやってたんですよね。けど、ひとりのスターに憧れてるとか、そういうロールモデルがあるわけじゃないんです。例えば、武道館や東京ドームでライブするのはやってみたいとか、もちろんあるんですけど、それがゴールではなくて。それを含めてやってみたいことが多いんです。ひとつずつやっていこうって生きてるところ。ラジオもやりたいし、地上波も出てみたいし、Mステの階段降りたいし、海外のフェスにも出たい。ぜんぶやってみたいんです。今回ライブツアーと同時に「Q展」っていう展示も始めましたけど、展示するなんて去年は考えたことなかったから、初めてのことしてるって感覚でワクワクしてます。展示始めるのも「Q曲」っていうアルバムができてからなんですけど、すごい謎の多いアルバムだし、それだけだと読み解くのに難しいから、作ってる環境も見せてあげたいみたいなのがあったんです。必要に駆られて、新しいことがどんどん始まっていますね。俯瞰して、自分の使える力を見て、得意分野と不得意分野がなんなのかを試しながら、全うしています。

- 目の前のワクワクしていることが今は音楽で、そこから派生して、新たなワクワクすることが始まっているのですね。音楽制作について聞きたいのですが、楽曲を聴くと、癖のあるトラックにオリジナリティを感じるのと同時に幅広い楽曲背景や思想を感じます。音楽を作る上でのインスピレーションはどこにあるのでしょうか?

東郷清丸 - インスピレーションは日頃の生活に溢れてますね。音楽でいうと、僕は小さい頃から両親が音楽マニアでレコードがたくさんあって、みたいな家ではなかったんですよ。でも、両親はふつうに音楽が好きで、音楽番組を見て、オリコンのトップ10のシングルを借りてきてカセットに入れて、みんなで車の中で聴いたりしてたんですよね。生活をしていく中で、テレビやラジオで音楽を聴いてきた。高校からはバンドにハマって、最初はBUMP OF CHICKEN、ASIAN KUNG-FU GENERATION、RADWIMPS、LUNKHEADとか。今でいうロキノン系から入って、大学に行くと詳しい友だちから海外の音楽をたくさん教えてもらって、そういう感じで音楽を聴いてきたんです。今はこういう音楽が面白いなとか常に掘っているんですけど、自分の音楽をゼロから作ろうって思ったときに、最近の自分のモードに合うビートとかで組み立てながら歌メロを作ってると、バンって来るときがあるんです(笑)。それは子どものときに聴いてたあの曲に近いなとかを思い出すときで。自分の中に羅列できる記憶と、もっと底の方に眠っている思い出せない記憶とかがあるんですけど、作るときはそれが混ざって出てくるみたいな。だから、小さい頃からインスピレーションは日々溜まっていってるんだと思います。それは引き出しっていうよりも、味噌や漬物みたいなものに近い。足されていって、全体が発酵というか。味噌自体に生態系があって、不思議な作用で結果的に新しい何かができてくるみたいな感覚ですね。

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- なるほど。音楽だけでなく、アルバム「2兆円」や「Q曲」のジャケットのアートワークも一度見たら忘れられないものを作っていて、細部にまでこだわりを感じます。

東郷清丸 - アートワークに関しては生み出していないんですよね。アートディレクターの唯さん(髙田唯)と、写真/タイトル付けの後藤さん(後藤洋平)のふたりに暴れてもらってる。僕はジャッジする立場ですね。唯さんがデザインをあげてきて、爆笑して、なんだこれみたいな(笑)。この感じでいきましょうってすぐなりますね。唯さんは同じ会社にいる人だから、丸4年くらいコミュニケーションとってきて、すごく共感する部分もあるし、お互い分かりあってる。だから、安心して背中を預けてます。僕は音楽で、唯さんはグラフィック/視覚表現、後藤さんは写真/変な言語感覚。本当にやばい人たちだと思っているから、信頼してます。それぞれが自分のこだわりに向き合ってるから、怠けたりとかそういう概念がない。東郷清丸っていう器に僕は音楽、他の人たちはデザインや写真、Youtubeやってみようとか、そういうの乗っけている感じです。「Q曲」だったら、唯さんに「ジャケットに顔出す?」と聞かれて、「2兆円」ってアルバム出したときに名刺変わりになったし、知名度として僕はまだまだなので、もっと顔も知ってほしいから、出したいですって言ったくらい。僕がしっくりくる音楽はこういう感じっていうのと同じように、唯さんは視覚表現で世界、日本、自分の周りとかの流れで、こういうのがグっと来るっていうのがあるだろうし、後藤さんの中にもあって。みんな新鮮なものを出し合ってる。◯◯っぽいものを目指していきましょうっていうよりは、あの辺良さそうって言って走っていく感じです。みんながワクワクしたままでやることを大事にしてますね。

-「Q曲」のリリースを記念してアパレルブランドcaph troupeとのコラボも行なっていますが、東郷清丸さんが考えるファッションについてはどうでしょうか?

東郷清丸 - ファッションは思想と生活が出ますよね。服を選ぶとき、僕が大事にしてるのは、その服ができたルート。食べ物も同じだと思うんですけど、身にまとうんだったら、それを作った人の気持ちが見える方が僕は嬉しくて。レーベルのロゴを作ってくれたKikilloっていうスペインに住んでるフランス人のアーティストがいるんですけど、日本のアニメとかめちゃくちゃ好きで、ストリートなセンスの人なので気持ち悪いのも作る。版権的にはアウトなものも作るし(笑)。このセンスが好きで、トップスはKikilloのトレーナーやシャツをよく着てますね。それはKikillo自体が面白そうだし、そういう人が作ったグラフィックが乗った服を着てると気分良いんです。あと、服で言ったらグッズのワッペンスウェットが「Q曲」のロゴと、ジャケットの写真をそのままワッペンにしたんですけど、それがかわいいんですよ。新潟の田中刺繍という刺繍屋さんにワッペンを作ってもらったんですけど、とても楽しんでやってくれて。ネットでテキトーに探して安いとこに頼もうとしたら、あそこまでのクオリティはできない。そもそも新潟は職人さんが多いみたいなんですけど、実際に最後に手を動かす人が楽しんでやってるかどうかって作品のエネルギーに影響すると思ってて。元の画像からワッペンにして解像度が落ちるとき、ここは活かすけど、ここだけは潰れるとか、ここだけは再現しようとか。僕のトレーナーから白シャツ見えてるとことかワッペンには残ってるんですけど、僕が指定したわけじゃなくて、職人さんが感じ取ってくれたんですよね。ここは見せたいんだろうって。完成品を見ると、楽しんでやってくれたんだろうなって伝わってくる。それが縫い付けられたトレーナーを着れるのは幸せだなって思います。グッズ作るときにコスト優先でチョイスすることがあるんですけど、自分みたいにものづくりをやっている側からすると、なるべく意味のあるチョイスをしたいなっていつも思ってます。

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- 東郷清丸さんにとっての良いものづくりってなんでしょうか?

東郷清丸 - 本当に良いものづくりってなんだろうって考えるんですけど、本屋さんに行けばメソッドの本は山のようにあるじゃないですか。デザインもそうだし、音楽もそうだし、ノウハウはすごいあるんですけど、今はそういうノウハウ優先のものってビジネスすることが第一目的で。それはそれで良いと思うんですけど、僕が思う、いちばん良いもの作りって、それじゃないんですよ。自分が音楽をやるようになったのと同じように、なんでか自然とやっちゃってたこと。もしくは、本人が苦手、自分の欠落してる部分だと思ってること自体が、いちばんの魅力になったりする。全部が表裏一体だと思うんで、本人の得意技を活かして生きるってことがワクワクすること。そういう土壌から出来上がったものこそ僕はいちばん美しいと思う。企画書通りにやることが第一目的になっちゃったものづくりは、やっぱり良いものにならないのかなって。日本で今、美しいと思うものづくりをしてる現場って、すごい少数派だなって思います。僕ら3人では当たり前にやってることがアルバム出したあとの取材で当たり前じゃないんだなってことが分かって。これは「Q曲」ができるまでの過程を見せておきたいなと。言葉では伝わらないから、実際に見せることが必要かなって思って「Q展」を始めました。みんなで打ち合わせしながら、ラインのやりとりを展示しようかとか。ものづくりは、こんなに楽しいことなんだよってことが伝われば嬉しい。WWWでのツアーファイナルでは「大Q展」をやります。

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- WWWでのツアーファイナルを10月5日の土曜日に控えていますが、ツアーとは全く違うこと仕掛けているのでしょうか?

東郷清丸 - 大きくふたつあって、まず一緒に出演する人たちですね。全部で12人くらいいるんですよ。そんな規模のライブを今までやったことなくて。いつも3人編成か、多くて5人編成。アルバムの中にはいろんな音が入っていても、僕は3人編成くらいがしっくりくるから、3人でできるようにアレンジし直してやるのがほとんどだったんです。けど今回は、アルバムを音源通りやったことないし、ツアーファイナルではそれを刻み込みたいというか。ほとんど全員がはレコーディングに参加してくれた人たちですね。それをまとめてくれるPAがアルバムの音を作ってくれたエンジニアの葛西敏彦さんなんですよ。だから、アルバムを作ったメンバーがほぼいますね。「2兆円」のパーカッション入ってる曲とかも全くやれてないので、そういう掘り起こしもやりたいなと。演奏者みんな、自分のフィールドでも活躍しているミュージシャンなので、そこで発生するエネルギーはすごいだろうって思います。あとは大Q展ですね。その日にしか見れない展示物もがたくさんあるし、12人とかでライブすることってこの先もないと思うんですよ。だから、ツアーで地方に行くときも、このことを熱心に説明して。全国各地でチケット買ってくれる人がいて嬉しいです。日本中の清丸ファンが集まってくれるって考えると、自然とボルテージが上がってきます。

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- ツアーファイナル楽しみにしています。今回、AWAで公開したプレイリストについても聞きたいのですが、どのように選曲したのかを教えてください。

東郷清丸 - 僕の中でナウな感じをチョイスしました。海外の音楽を聴く入りがアメリカ、イギリスだったんです。ヴァンパイア・ウィークエンドやトゥー・ドア・シネマ・クラブ、フレンドリー・ファイアーズとか。2010年から2013年くらいで、大学生だった頃ですね。今はアメリカ、イギリスの音楽好きの別の国のひとたちが作った音楽がすごい好きで。2曲目に入れたButtering Trioはイスラエルのバンドで、6曲目のLiquid Saloonも同じレーベルだからイスラエルかな。アジア中東の土臭さが自分の中にしっくり来るんですよね。あと僕の中で初なんですけど、3曲目のロシアのKate NVは最近すごい好きです。知ってるひとはもう知ってるんだろうな。このプレイリストは僕のワクワクするものを詰めていった感じですね。このプレイリストに少し入ってる日本人が小川 美潮さんと清水靖晃さんと、優河さんの岡田拓郎さんプロデュースの曲は音がめちゃくちゃかっこいいと思うから入れました。自分の聴いてた音楽がAWAにしっかりあって嬉しかったです。

- ありがとうございます。最後に今後の展望を教えてください。

東郷清丸 - 次作りたい音楽は見えていて、これ以上は手を動かさないと見えてこないってところまできてます。こういうことやりたいっていうのは、たくさんあって。ライブ練っていくのも楽しいんですけど、音楽作るのは別の脳なので、ファイナルをしっかり成功させて、早くそれにも取り掛かりたいですね。


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Credits

Text:Toru Miyamoto

Photo:Toru Miyamoto

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