Dos MonosがAWAでプレイリスト『ドスシティの住人』を公開。「メインを侵食していくバグでありたい」

Dos Monos(ドス・モノス)がAWAでプレイリスト『ドスシティの住人』を公開した。

Dos Monosは1993年生まれの 荘子it(ラッパー/トラックメーカー)、TAITAN MAN(ラッパー)、没(ラッパー/DJ)の3人からなるヒップホップユニット。2017年に初の海外ライブをソウルで成功させ、その後はSUMMER SONIC ‘17などに出演。2018年にはLAのレーベルDeathbomb Arcとの契約も発表し、フランスのフェスLa Magnifique Societyなどにも出演し、2019年3月にデビューアルバム「Dos City」をリリースした。このアルバムはフリージャズやプログレなどからインスパイアされたビートに加えて、3MCのズレを強調したグルーヴが魅力となっている。今回、AWAでプレイリストを作ってもらい、荘子itとTAITAN MANのふたりに話を聞いた。

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- アルバム「Dos City」はどういう経緯で作られたのか。

荘子it(写真:中央) - 僕自身が高校3年生のときからトラックを作り始めて、できあがったトラックを世に出すために、中高の同級生に声かけて、ゼロからスタートしたんです。本当にやりたいようにやっただけなので、いろんなコンセプトは後付けなんですよ。アルバム名の「Dos City」はもうひとつの街。活動し始めたときから、シティポップが流行っていて。それと同じようなカルチャーには属しているけど、おれたちなりのシティミュージックはこういうことっていうのを形容しています。このコンセプトを何で言い表すかって思ったときに「もうひとつの街」っていうチェコの作家ミハル・アイヴァスの小説があって、それからタイトルをとりました。

TAITAN MAN(写真:左) - 僕たち3人はもともと中高でバンドを組んでいて。荘子itはギターで、僕はドラム。そのときのボーカルは元yahyelで、今はDATSのMONJOEですね。

荘子it - 大学受験でバンドは解散して、暇だったので、トラックを作り始めたんです。それがだんだん形になっていって、いい感じになっていったのが、Dos Monosに直結した。高3だから6年前とかですね。バンドをやめて試行錯誤してトラックを作りました。もともとはバンドのデモを作るために、DTM(デスクトップミュージック)をやり始めたんですけど、バンドをやめて、ひとりで曲を作ろうってなってからは、だんだんバンドサウンドから遠く離れた曲を作るようになっていきました。

TAITAN MAN - 僕は中高でドラム叩いてて、大学に入ってからは3年くらい演劇をかじってたんですよ。そこで発声のリズムはおもしろいなとか思ってたところ、荘子itからラップやろうって誘われて、それではじめたという感じですね。

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- 荘子itはなぜ、TAITAN MANと没のふたりに声をかけたのだろうか。

荘子it - 世の中に対して、だるいなってノリが似ていたからですね。3人とも、ラッパーとしてのスキルは一切なかったけど、ゼロから始めるってなったときにバイブスを共有できるっていうのが大きかった。変なとこで笑っちゃう感覚とか。

TAITAN MAN - 僕は好きな劇作家の例え話に共鳴したのがあるんです。ある男女が今にも接吻するシーンがあったとして、そのシーンの上を飛んでいる鳥のウンチを描写してみたいっていう。多くの人が拍手喝采を浴びせる接吻シーンではなく、真上に視点をずらしたときに存在しているウンチにおもしろさを見出してみたい。僕はそういう部分におもしろさを感じるんですよね。

 

荘子it - 同じ中高時代を過ごしたことで、こういう感覚を共有するのが大事でした。クラスの中心人物のストーリーが、繰り広げているのを横で見てたわけじゃないですか。同じようなことをだるいなって思うことができあがってた。

TAITAN MAN - けど、僕らは陰キャラみたいなノリもそれと同じくらいだるいと思っている節はありました。陰キャラが裏で唾吐くみたいのがこの世で一番ダサいというか。だから、そのどちらのトライブにも寄りかからない第三勢力としての不気味なパワーを持っていたいと思ってました(笑)。

荘子it - メインを侵食していくバグでありたい。学校もちゃんと行ってたし、メインの登場人物や体育教師とか、何かの交流をしてバグを起こすみたいのを生きがいにしていました。そういう学園内のノリが社会に出てきてしまった感じですね。自分らの居場所を作って、バグとして自分たちの表現をメインに浸透させていきたいって意図はあります。

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- Dos Monosのノリはフィジカルのアルバム「Dos City」を買えば、さらに理解が深まるかもしれない。ブックレットにはコラージュしたアートワークが多く載っている。一部を紹介すると、ブックレットを開いた1枚目には、猿がサッカー盤で遊んでるコラージュ作品。これは一体どういうことなのだろうか(笑)。

TAITAN MAN - Twitterにクソコラbotっていう一般投稿から応募するアカウントがあって、大学2年くらいのときに、僕はそれの常連プレイヤーだったんですよ。そこである日、“こんなゲームは嫌だ”っていうお題が出て、僕はパワプロの投げているボールをジャガイモに加工したクソコラを投稿したんです。で、そのとき荘子itに「お前はおれに勝てるのか?」って吹っかけたら、一発目に出してきたのが、これだったんです(笑)。

荘子it - 日韓ワールドカップを真上から牛耳ってる巨大な猿っていう裏テーマだったんですが、クソコラbotには採用されませんでした(笑)。

TAITAN MAN - おれは所詮テレビゲームの話にしかお題を解釈できてなかったのに、彼はめちゃくちゃ拡張した概念でブッこんで来て、これはもうアメイジングだなと(笑)。興奮そのままに、Dos Monosのアー写に採用したんです。

- なるほど。Dos Monosのコンセプトや名前の由来についても聞いてみた。

荘子it - 僕は隙間産業の廃棄物ってよく言ってます。隙間産業って言い方だけだと、経済的な原則に則ったら、やったもん勝ちみたいな、割と普通にいい意味じゃないですか。隙間だったものがだんだんメジャーになっていく。けど、そこからさらにこぼれ落ちるのは、隙間産業の廃棄物。誰も気づかないし、やってもしょうがないものを救い上げて、メインカルチャーや経済的な原則になんとなく日和った奴らの目を覚まさせようっていうコンセプトです。そういうものが、おもしろいよねっていうのを3人で共有してました。Dos Monosの名前の由来は没に「ラップグループを始めたいけど、名前は何がいいだろう?」って相談したときに、没が当時スペイン語圏のカルチャーにハマっていて。スペイン語のDos Monosって響きがすごい良くて、僕もすごくいいと思ったので即決しました。普通の訳し方では2匹の猿。スペイン語でDosが2、Monosが猿で。でも裏テーマとしては、“猿2.0”であるというのがあって。猿の進化系が人間だというダーウィンの説は間違っていたことが今では明らかになっているんだけど、そのうえであえて"猿2.0"を自称することで、人間に似て非なるものっていう意味を後付けし、さらに、そういう過去の遺物を創造的に読み替えて再提示する身振り自体がDos Monosの音楽にも通じるなって思っています。

TAITAN MAN - それをコンセプトに掲げる僕らが、最後にNEO HUMAN(ネオ・ヒューマン)っていう高次元に上がる感じで閉じたらいいなって思い、アルバムの最後の曲“ドスシティ”では「NEO HUMAN!このエンドロールは終わりを告げながら一歩先のネオンを照らす」っていうリリックを入れました。

荘子it - NEO HUMANはTAITAN MANの思いつきで。トラックは僕が作って、こういうコンセプトにしようって大枠は伝えるんですけど、あくまで3人それぞれのverseは自由に作るんです。このリリックがあったから、じゃあ、そのエンドロールで終わらせてあげようって思って。ブックレットを見れば分かるのですが、ネオンのNEO HUMANのアートワークを僕が作って、それがエンディングになってます。思いつきをピックして、あとでコンテキストに回収してますね。録音された即興演奏を編集で作品に練り上げるやり方に近い。歌詞カードには散々、人の体に猿の顔とかコラージュして、人に似て人にあらざるっていうことをやっていて。ドスシティの住人たちのあるべき姿がNEO HUMAN。まあ、どうでもいいことなんですけどね(笑)。

Dos Monosのデビューアルバム「Dos City」をぜひ聴いてもらいたい。また、AWAではDos Monosの3人それぞれが10曲ずつをセレクトしたプレイリスト『ドスシティの住人』が公開中だ。このプレイリストは3人それぞれの形成している楽曲を選び、一言コメント付き。アルバム「Dos City」と合わせて、チェックしてもらいたい。

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Dos Monos’s playlist『ドスシティの住人』

[Track list]

Selected by 荘子it

「劇場Dへのもう一つのDメロ」
01. Das EFX「Mic Checka」
02. Aesop Rock「Daylight」
03. Eric B. & Rakim「Don't Sweat the Technique」
04. Tyler, The Creator featuring Domo Genesis and Earl Sweatshirt「Rusty」
05. Janne Da Arc「DOLLS」
06. Dean「Put My Hands On You feat. Anderson .Paak」
07. DATS「Filter」
08. Deep Purple「Smoke On the Water」
09. 菊地成孔DCPRG「構造 1 (現代呪術の構造)」
10. Dos Monos「劇場D」

Selected by TAITAN MAN

「Be Twisted.」
11. SIMI LAB「Twisted」
12. LowPass「Mirror Mirror」
13. skillkills「Chewing Gum」
14. Battles「Atlas」
15. Hella「Biblical Violence」
16. Odd Future「Oldie」
17. プライマス「Wynona's Big Brown Beaver」
18. Little Simz「Offence」
19. Red Hot Chili Peppers「Suck My Kiss」
20. Dos Monos「バッカス」

Selected by 没

「酔っぱらいが夜道で歌っていたのが耳から離れない!」
21. Sonny Sharrock「Black Woman」
22. Aphex Twin「Milk Man」
23. 山仁「Don't Worry feat. LOOP JUNKTION」
24. Giuseppi Logan「Love Me Tonight」
25. Albert Ayler「Truth Is Marching In」
26. Biz Markie「Just a Friend」
27. ウルトラQ サウンドトラック「ウルトラQメインテーマ」
28. Animal Collective「Essplode」
29. Big Star「Kanga Roo」
30. Dos Monos「EPH」

[Playlist’s URL]
https://mf.awa.fm/2Imjb4S


Links

Twitter:https://twitter.com/dosmonostres

Credits

Text:Toru Miyamoto

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