スリーピースロックバンド、nolala(ノララ)への2年振りのインタビューを敢行。
メッセージ性の高い楽曲を武器とするツインボーカルのガールズバンドは、2021年5月に日本コロムビアとのマネジメント契約を発表した。
前回のインタビューから2年、コロナ禍に翻弄されながらも、ひたむにき音楽を届けようとする彼女たちの今の心境を聞いた。
「ルームメイト」について、楽曲に込めた想いを教えてください。
千陽(Gt,Vo):この曲は、実は「グッバイライアー」と同じ人の曲なんです。
なんと!実は漠然とですが、そんな気がしていました。
千陽:本当ですか(笑)。「グッバイライアー」が(恋人と)別れた後のストーリーだったので、その前作になるように、「ルームメイト」は別れる前の気持ちを歌っています。なので、テーマはやっぱり”クズ男”なんですけど(笑)。恋愛している時って、周りからは「そんな恋愛意味ないやろ」ってどれだけ止められても、どれだけ相手かクズでも、見えないんですよね。もうズブズブになってしまって。それで何年も経って、もうこんなんじゃダメやし、ケリつけないと、って思った時があって。それを思い出しながら歌詞を書いたんですけど…別れる時ってめちゃくちゃ勇気がいるんですよね。
わかります…。
千陽:大嫌いになったとか、他に好きな人が出来たとかではなく、自分たちがこのままじゃいけない、っていうのを理由に別れるのは、何かのきっかけとか、勇気を振り絞らなきゃ出来ひんなと思って。昔、最後に自分が頑張った勇気を曲にして浄化できたらな、と思って作りました(笑)。
聴いてる方の気持ちも浄化してくれると思います。ちなみに、この曲も変わらずトイレ作曲ですか?
千陽:引っ越しをして、間取りが変わってしまったのでこの曲はトイレではないんです(笑)。前の家は、洗面所とトイレが一体型だったので、広さもちょうど良かったんですけど、「ルームメイト」はお風呂場で作った気がします。結局、洗面台の周り(笑)。
水周りが調子良いのかもしれませんね(笑)。
千陽:そうですね、個室スペースが良いみたいです(笑)。
「ルームメイト」を聴き終わった後に、改めてタイトルの意味を自分なりに考えてみたのですが、聴き手によってさまざまな捉え方が出来るタイトルだと感じました。美寿々さんとひなさんは、初めて「ルームメイト」を聴いた時の感想は覚えていますか?
美寿々:「ルームメイト」は良い意味で最近っぽくなくて、昔好きだった曲の雰囲気とかも含まれているなと思いました。千陽ちゃんの持ってくる曲全部に対してなのですが、全部良いと思ってしまうんですよね(笑)。千陽ちゃんが楽曲を持ってくる中で、本人としては「これはリード曲にはできんな」とか「アルバムのうちの一曲やな」という評価だったとしても、私は “いや、シングルっぽい。シングルで出せる曲やん” って思っちゃうんです(笑)。「ルームメイト」もすごくキャッチーで、とっつきやすい曲だなと思った代表格でした。
ひな:最初に聞いた時に、”絶対これやな”って思いました。「もう終わりにしよう」から歌詞が始まるのを聴いて、“きたー!!”っていう感じがあって。
千陽:初めて聞いた(笑)。
ひな:千陽ちゃんにはスタジオで言ったと思う(笑)。冒頭の部分が頭から離れなくて、もうこれはMVにしたい、って思ったのを覚えています。
MVも楽曲タイトルに沿って、本当にワンルームのような感じのところで撮影されていましたね。色味や画面越しに伝わる雰囲気から、視覚的にも諦めというか別れる時の心境を感じることができました。撮影時の思い出はありますか?
千陽:撮影を担当してくれた監督が、「埋まらない空白を辿って」も撮ってくれた大学生の方なんですけど、すごくセンスのある子で。基本的にMVは監督の感覚とひなの希望に任せています。すごい、芸能人になった気分になる場所でした。
ひな:一軒家のハウススタジオで、部屋がたくさんあるんですけど、全部のシーンをその一軒家で撮りました。
千陽:今のアー写もあの場所で撮ったね。普段、MVを撮る時はなるべく予算をかけないようにしているんですけど、今回の場所に行った時は“え、芸能人みたいやな”ってめちゃくちゃ高まりました(笑)。
それはテンション上がりますよね(笑)。
千陽:でも撮影の時ちょうど、ディズニーのゲームアプリがめちゃくちゃいいタイミングで、ずっとゲームしてたんですよ(笑)。撮影のギリギリまでゲームをやっていて、“やばいこれを3時までに集めなあかんのに!”っていうタイミングでMVを撮っていたので、結局ゲームは間に合わなくて、ゲームとそれによって凹んだ思い出があります(笑)。
いい思い出ですね(笑)。2曲目の「私と居たこと」も、すごく好きです。ひとつの作品に「ルームメイト」と「私と居たこと」が入っていることに意味があるように感じたのですが。
千陽:MVにする時、意見が割れてめっちゃ話し合いましたもんね。MVにしたら、その曲がメインになるけど、私はどっちがメインでも良かったんですよ。それくらいどっちの曲もイケると思ったし、好きやなって思っていたので、全然決まらなくて。個人的にも、カップリングとはいえ推し曲です。この曲は過去最高の早さで出来ました。
「私と居たこと」をライブで聴ける日を楽しみにしています。
ひな:ライブの時この曲めっちゃ辛いんですよ(笑)。
そうですよね(笑)。ハネてるし食ってるし(笑)。
ひな:息続かんし(笑)。いかに苦しくなさそうな表情を保つか…。
千陽:地獄です(笑)。
サビ前の部分が特に耳に残ったのと同時に、「私と居たこと」のプリプロは一体どんな感じだったのかなって気になりました。
千陽:美寿々先生から修正が入りました(笑)。
美寿々:歌詞の言葉が多いのもあって、歌詞は食ってるのに演奏は食ってへんっていうのがあって、歌詞に合わせると不規則な感じだったんですよ。それが千陽ちゃん的には手グセと口が自然とあってるからそっちの方が良い、という話だったんですけど、客観的に聴いているとわけがわからんくなるので、規則正しくさせていただきました(笑)。
千陽:曲作りの段階で何十回もギターを弾きながら歌っているので、何がおかしいかも全然わからなくなっているんですよね。そこはいつも先生にご指摘いただいてます。ちなみに、この曲はひなもドラムにめっちゃ苦戦してましたね。
ひな:レコーディングエンジニアさんにも、この曲めっちゃ苦戦したやろ、と言われました。でも録り過ぎたら良くないと思ったので、この曲は2発録りで終わらせました!
素晴らしい!最後に、今後nolalaとして、どんなバンドになって行きたいですか?
ひな:クアトロツアーしたいです!
千陽:正直、“これをやりたい!”とか、“ここに出たい!”とか、明確な目標はないんです。自分に自信がないから、ツアーをやっていてもめっちゃ不安なんですよね。眠る時にライブで失敗してしまったこととか、嫌なことを思い出したりして、疑心暗鬼になることも多いんです。ただ、「ライブ良かった!」とか、ファンの方から言ってもらえる言葉は信じられる。なので、明確な目標はないんですけど…街を歩いたらチヤホヤされるようになりたいです。街で他のバンドのTシャツを着てる人を見るんですけど、それがnolalaのTシャツを着ている人を見かけるとか、何気ないツイートをするだけでいいねがめちゃくちゃくるとか…(笑)。自分に自信がないので、みんなにチヤホヤされたいな、って思ってます。
いいじゃないですか!千陽さんはその繊細さが良い曲を生み出す源のような気がします。
美寿々:千陽ちゃんの話を聞いていたから、私も今、チヤホヤされたいモードになってるんですけど(笑)。私は、バンドに詳しくない人たちにも認めてもらえる存在になりたいです。一般的にバンドですごい人たちって、テレビに出ていたり、フェスの大トリをやる人たちだと思うんですよね。そうなるためには、ライブを重ねて、いつかテレビにも出れるようになって、認知されるようになっていきたいです。
ありがとうございます。最後に、ツアーもいよいよ終盤ですが、今回のツアーはコロナもあって大変だったと思います。ライブに対する思いを教えてください。
千陽:ライブの顔合わせの時もよく話すんですけど、どのバンドが出演辞退しても敢行できなかったツアーでした。バンド以外にも、ライブハウスが営業停止していても出来なかったし、来てくれる予定のお客さん全員が怖いから行かない、っていう選択すれば出来なかった。あの日、あの場所に全員がいてくれたからこそ、ライブは成り立つんだなと実感しました。コロナ前は、ライブをすることが当たり前だと思っていたんですけど、nolalaを観に来てくれたり、作品を手に取ってくれる人たちがいるからこその私たちなんだな、っていう気持ちが強くなりました。
ひな:コロナであったとしても、制限があったとしても、私たちは真摯にやるだけ、っていう気持ちなので、ライブに対するモチベーションも変わらないですね。
美寿々:これはよく言われていることだと思うんですけど、その人にとっての“音楽の大事さ”が、コロナによって浮き彫りになった部分はあると思っていて。ライブに行く、行かないの話ではなく、生活に欠かせないものかどうか、という部分で、温度差を目の当たりにして切なくなる時もあります。私としては、自分たちが音楽を楽しんでいれば、周りの人も楽しくなる、っていうループを続けていきたいと思っているので、その気持ちを持ち続けていけたらと思ってます。
前回のインタビュー同様、飾ることなく質問に答えてくれた3人。2年前の彼女たちは、三姉妹のような雰囲気だったことを覚えている。その雰囲気は残しつつも、以前より対等な関係値になっているように感じた。仲の良さ、信頼感はそのままで、さらに強固なサウンドを鳴らせるバンドになって行って欲しい。音楽、そしてライブに対する想いが詰まった念願のツアーが、無事に完走することを願って。
nolala Official Twitter:https://twitter.com/n_o_l_a_l_a
interview & text:Makiko Kashio