「SPICE」リリース記念!TOKYO CRITTERSの結成から独特な制作過程まで

ルンヒャン、菅原信介、ZIN、Shingo.Sによる 3 SINGER & 1 TRACK MAKERによるコラボレーションユニット、TOKYO CRITTERS(トウキョウ クリッターズ)の4th EP「SPICE」が5月18日にリリースされた。筆者が一番オススメしたい彼らの楽曲の楽しみ方が、お酒を飲んでいる時。無駄にお酒が強いせいで、誰かと飲むとほぼ介抱役に回る身としては、ひとりでゆっくり飲める時に聴くと、3人それぞれの声にシブユルなリズムが心地良く、ふわふわとした気分になる。TOKYO CRITTERSの曲がいい感じに酔わせてくれて、いつもよりお酒が美味しく感じられるのだ。

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そんな魅力的な楽曲を発信する彼らだが、ソロ活動も活発。一体どういうスタイルで楽曲を制作しているのか、TOKYO CRITTERSとしての活動することとなった経緯はなんだったのか。

 

――コラボレーションユニットとして活動することになった経緯を教えてください。

ルンヒャン(写真:真ん中) 数年前に、ZINと菅原信介は当時NYにいて、私とShingo.Sさんもそれぞれ旅でNYに行って。もともと仲は良かったんですけど、4人で遊んだ帰りの日に「せっかくだから記念に曲作ろうよ」っていう話になりました。あれっていつだっけ?4年くらい前?

菅原信介(写真:左) 2014年です。2014年の11月です。日付は4日か5日のどっちか。

ルンヒャン 気持ち悪い〜(笑)。

Shingo.S せっかくだからセッションして、記念に曲でも作ってみない?って言って。ホテルに集まろう!ってなって。

ルンヒャン 私もNYがその時が初めてだったので、なんかNYの風が音に入るんじゃないかってみんなで言ってて、こういう機会なかなかないから作ろう、ってなりました。

菅原信介 やばいですよね、このエピソード語る時なんか自分が自分じゃない感じがします。なにこのオシャレなトークみたいな。普段はしない。でも嘘じゃないです(笑)。

ZIN(写真:右) 約2時間くらいでShingo.Sさんがトラック作って、みんなで歌詞を書いて。

Shingo.S そうそう、みんなでベッドの上でおかし食べながら(笑)。

ルンヒャン 出来たトラックに私たちが歌を入れて。その時に出来た1曲が「GOLD FISH」なんですけど、完成した時に「なんかいい曲ができたね、ちょっと1曲配信してみようか」っていうのがTOKYO CRITTERSのはじまり。その時はまさかこんなに、いろんな曲を引き続き発信したりすることになるなんて全然思ってもなかったです。

――ユニット名を「TOKYO CRITTERS」にしたのはなぜですか?

ルンヒャン CRITTERSっていう言葉自体が「変な生き物」とかそういう意味で。誰も東京出身はいなくて、菅原は宮城、ZINは大阪、私は福岡、Shingo.Sさんは横浜。バラバラなんです。でも出会ったのが東京で、環境も思考もバラバラなわたしたちが”音楽”っていう線で繋がったから、「東京のヘンな生き物たち」ってしてみようかな、って。

 

――NYで楽曲制作をする前はどのような関係性だったのですか?

Shingo.S ”音楽仲間”って感じでした。でもそんなに、お互いがすごい仲良い、ってわけじゃなかったです。

 

――お互い初めて出会ったのはいつですか?その時の印象を覚えていたら教えてください。

ZIN 僕はルンさんがやっていたイベントに僕と信ちゃんが出させてもらったことがあって、その時がみんなと初対面でした。

菅原信介 ZINちゃんを初めて知ったのはyoutube。すごい画質の悪い映像があって。なんだこれ?って聴いてみたらめちゃくちゃかっこいい!ってなって。

ZIN 何の映像?

菅原信介 なんか黒いライブ映像(笑)。

ルンヒャン 私は自分がライブをしている時に、ファンの方が「すごくいいアーティストがいるから」って菅原信介のCDをくださって。そこからずっと名前を知ってて、信ちゃんのファンでもあって。そういう繋げ方をしていただいたりもしました。

菅原信介 僕はルンヒャンさんはもう事前に知っていた方なので。初めて会ったのは5年くらい前ですかね。

ルンヒャン 当時「DRAMATIC SOUL」っていう渋谷をホームにしたイベントを立ち上げてやっていて。そこに今話題の、噂になっているアーティストとかを呼んだりしている中で信ちゃんとかZINちゃんとかにも出てもらったりして、出会いました。

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――普段の曲作りについて教えてください。

Shingo.S ちょっと特殊で、まずトラックって呼ばれてるカラオケ状態のものを僕が作ります。で、メンバー内コンペをやるんです。同じトラックをみんなに送って、自由にメロディをフルコーラスつけてください。締め切りはこの日までです、みたいな感じで。3人は送られたトラックをそれぞれ聴いて、自分の思うようにメロディーをつけて、僕に送り返します。で、その3パターンあるメロディを独断でいいとこ取りをして、一つの曲にします。例えば、Aメロはルンヒャン、BメロはZINちゃん、サビは信ちゃん、みたいな感じでうまく組み合わせます。ラララとかで入ってるメロディを、曲に並んでる状態にして”結果発表”としてまたメールで送ります。そこからメロディが採用されたところは採用された本人がリリックを書いていくので、リレー形式で歌詞が出来上がります。

 

――歌詞については事前に打ち合わせをするのですか?

ルンヒャン この曲は愛について、とか恋人同士の話にしよう、っていうテーマだけ、みんなで相談します。例えば、私のAメロが採用されたら、私からスタートします。自分のストーリーを書いていき、次の人にバトンをつなげます。そうするとどんどん、私は両思いのつもりで書いてたのに、次の人の解釈は片思いのつもりで書いてて、またその次の人はどんどん別の恋愛を思い浮かべて書いて、思ってもない展開になったりもします。

 

――「やっぱり両思いがいいんだけど」みたいな話し合いになったりはしないのですか?

ルンヒャン ほとんどないです。すべて揃った中で客観的に見て、例えば恋愛の曲だったらリスナーの人にちゃんと愛してるものが伝わるかっていうのをちょっと整理して。「この表現ちょっとわかりにくいよね、私にもこの表現伝わってないんだけど」とか「僕にも伝わらないから書き直そう」とか、そういったことはあります。微調整はあるんですが、ほとんど変わらないです。

 

――このインタビューを読んだ後、楽曲に触れるとまた違って聴こえそうですね。

Shingo.S そうですね、全部の曲は聴こえてくるメロディの裏側に没2テイクが必ず存在するんです。

ZIN それ知ってるのはShingo.Sさんだけで僕らは知らない(笑)。

Shingo.S そう。だから自分が選ばれるかどうかわからないまま曲を作ってもらってるから、心苦しい気持ちで選んで、ごめんなさい、って思いながら「結果発表〜」ってやってます(笑)。

菅原信介 もっと言えば、Shingo.Sさんはもっと細かい編集もしていて。例えばコーラスとかも、こっちのコーラスとあっちのコーラスを組み合わせたりとか、ちょっとアドリブみたいなもの、例えばアウトロでやってたのをイントロに持って行ったりとか、いろんな組み合わせ方をして、単にAメロ・Bメロ・サビってだけでなくて、Bメロのここの部分をAメロのここにはめ込もう、みたいなそういう緻密なことも全部やってくれていて。それでやっと完成します。

Shingo.S サビだと思って作っていたものが結果発表ではそれがBメロになっていたりとかはあるので、3人はどうなるかわからない状態でいつも結果発表を聞いてるんだろうな、って思ってます。

ルンヒャン 結果発表がくると、自分が想像していたものとは全然違うものになっていたりします。私はサビをこうやってアプローチしたんだけど、他の人は全然違うアプローチをして、私は没でその人が採用されたりしてて。それが面白くて、毎回サプライズがあって、もうワクワクするんですよね。あ、こんなメロディのつけ方この人したんだ、とか。そういう発見がいっぱいあって刺激的です。

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――結果発表で出されたものはみなさん納得のいくものに仕上がってるんですか?

ルンヒャン それがね、100%納得がいくんです。

ZIN 「俺の方がいいでしょ」みたいなことは絶対思わない。

ルンヒャン うん、思ったことない。

菅原信介 僕に関しては、もう忘れてます。何を提出したか(笑)。そして、意外とこれ採用されちゃったか、っていう時があります。

ZIN それあるんですよ(笑)。

菅原信介 採用されちゃったということは、そこの部分の歌詞を書かなきゃいけないんですよ(笑)。ちょっと遊びで作ってる箇所もあるので。

Shingo.S 信ちゃんは相当宇宙語で入れてくるんです(笑)。

菅原信介 これどうやって歌詞をはめろって言うんや?あ、俺が考えたからしょうがないか、って(笑)。みんなも多分同じ思いしたことあると思います。

ルンヒャン メロディの言葉が全部「もんもんもんもん・・」の時もあるんですよ(笑)。

菅原信介 例えば「WHAT’S UP」でいうと、「悶々してるなら〜」ってあるじゃないですか。あそこ僕の中ではずっともんもんで歌ってたから、歌詞が思い浮かばなくて、ギブアップ、って言ったんですよ。そしたらルンヒャンさんが「じゃあ私トライしてみるね」って歌詞をのっけてくれて。

ルンヒャン たまにギブアップ・パスあり。

菅原信介 そう、進まないから。ギブアップ率高いです、僕(笑)

――新EPのタイトル「SPICE」に込めた思いはなんですか?

ZIN 今まで季節モノに合わせてタイトルをつけてたんですけど、今回2018年一発目の作品で、みんなで「俺らネクストレベル行ったな」ってテンション上がってて(笑)英語で「spice up」っていう単語があって、”何かを豊かにする” っていう意味なんですけど、なんかそれいい言葉だなって思って。今回の4曲とも全部色も違うし、1曲1曲がその人の日常を豊かにするような作品になったなという思いもあったし、「spice up」っていう単語もあるし、響きも“スパイス”で覚えやすいし、いいなぁって感じで決めました。・・・いいですか?(笑)。

Shingo.S ZINちゃんが出したもんね、「SPICE」って案。

――制作中大変だったことや印象に残ってることはありますか?

菅原信介 今回は歌詞が全員結構大変でしたね。

Shingo.S 「THE ONE」のサビのリリックは珍しくギリギリまで悩んでましたね、みんな。

ZIN 全員手こずった。

ルンヒャン あとはソロ活動が活発なので、レコーディングとかMV撮影のスケジューリングが大変でしたね。

 

――制作期間はどれくらいだったのですか?

Shingo.S 今年に入ってから、一発目のコンペいきますよっていうのが始まって、4曲分のコンペが終わったのが2月末とか3月頭くらい。そこから一気に4曲分のレコーディングをしたので、かなり短期間にぎゅっと詰め込みました。

ZIN スケジュールがエグかったですね。

 

――多忙なメンバー同士なかなか集まれないと思いますが、レコーディングはどうしているのですか?

ルンヒャン なかなかメンバーが集まれないですし、それこそ初期の2作品目くらいまではZINちゃんはNYにいたので、遠隔でレコーディングもやっていました。

菅原信介 今のオシャレワードですよ、遠隔レコーディング。

ルンヒャン やかましいよ(笑)。今回の制作期間はShingo.SさんがLAに行ってたので、遠隔で制作してました。

 

――遠隔レコーディング大変でしたよね?

ZIN はい、しかも僕、日本語の歌詞でエンジニアさんが日本語が通じない外国の方だったので、「2番目のこの歌詞からやりたい」って言っても伝わらないので、ローマ字で全部ルビ振って、とかやってました。Shingo.Sさんがわかりやすいように歌詞に色つけてくれたりとかしたんですけど、それは大変でした。

菅原信介 一作目の「TOKYO CRITTERS」のジャケットデザインを見てもらうとわかるんですけど、あんな感じでレコーディングもやってました。

 

――ZINさんがNYにいる間のMV制作はどうやっていたのですか?

ルンヒャン MV制作も遠隔でやってたんです。ZINにはNYの映像を撮ってもらって、それをデータで送ってもらって、私と信ちゃんは日本で一生懸命撮って。どうにか一緒にいるような空気感で作るようにしました。iPhoneでShingo.Sさんに「こんな感じで」と伝えて撮ってもらって、それぞれ撮りあって、それをiMovieで編集して(笑)

 

――今回の4曲に関してはどのようにMV撮影を行ったのですか?

ルンヒャン 「THE ONE」が出来た時から、冒頭シーンのイメージがずっと頭にあったので、ドローン技師の友人に相談したら「飛ばしたい飛ばしたい!」って言ってくれて。千葉の銚子まで来てもらって撮ってもらって、それを一つの素材として組み込みました。

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――MVまで自分たちでやっているのには驚きました。

ルンヒャン 超DIYなんです。本当に4人でやってて。

Shingo.S そう、だからFacebookでAWAさんから連絡頂いた時も「さぁ誰が返信しよう?」ってなって(笑)。

ZIN 責任者いない(笑)。

ルンヒャン 配信も全部身近な人に頼んでますし、ラジオとかいろんなお話も直接受けてて。だから1リスナーの方がこういう縁を繋げてくれてることでTOKYO CRITTERS成立してて。今年の頭に、長崎のダンスイベントとか、山口のイベントとかいろんなところに呼んでもらえたのも、リスナーの方やダンサーの方が気に入ってくれたりっていうことの本当連続なんです、この3年間。別の音楽配信サービスでも、中の人が気に入ってくれてバナーにどんどんしてくれたので、実際お会いしたことはないんですけど、聴いて好きだな、って思った方がいろいろと繋げてくださってます。

 

――このインタビューがまた何かにつながるかもしれませんね。

ルンヒャン そうですね。本当にありがたいです。

 

――AWAユーザーが作成したプレイリストにもTOKYO CRITTERSの楽曲がたくさん使用されていて、ドライブや夜に聴きたい、といったそれぞれのシーンに合う楽曲が選ばれています。

ルンヒャン すごく嬉しいです。

菅原信介 ドライブに合うとはよく言われます。車持ってないんですけど。

ZIN 適当やなぁ(笑)。

 

――「12345」が現在AWAで最も聴かれている楽曲ですが、エピソードがあれば教えてください。

菅原信介 「12345」(ワンツーファイブ)って絶対最初読めませんでしたよね。読めました?

ルンヒャン ラジオとかで流したいんですけど、っていうご連絡を頂いた時、「一応この曲の読み方教えてください、何て読むんですか?」っていうご連絡をいただいたこともありました(笑)。

――東京と大阪で開催される「SPICE」リリースパーティはどういったものになりますか?

ルンヒャン この前東京・大阪でやった時に、思ったよりたくさんの方が観に来てくれて、大阪は会場に入りきらなくて。なので今回は規模を広げました。東京も椅子とか全部外してスタンディングにして、みんなで飲みながら踊ったり、一緒に遊べるようなパーティにしたいなって思ってます。

 

――普段のライブの雰囲気はどういったものですか?

ルンヒャン TOKYO CRITTERSとしてライブをやる機会が少ないんですけど、実際にライブに触れると思ったよりファニーというか。(菅原を見ながら)ライブだとちょっと奇妙な人もいるし(笑)お客さんが腹抱えて笑うような、そんな雰囲気です。私たちもすごい明るいんですよ。なんかクールなイメージがあるみたいで。

それを意外だって思う人もいるし、ZINちゃんと菅原信介の声が逆だって思ってる人もいるし。

菅原信介 本当ね、本当に言われるんですよ。そういう場合だと、「あ、菅原さんこっちの声・・」って目の前でがっくしな感じやめて欲しいんですよね(笑)。

ルンヒャン あと、会場ごとに限定フードがあります。今回「SPICE」っていうテーマなのでスパイシーなものを限定で出していただくようにお店も協力してくださって。ぜひそちらも楽しんでほしいです。

 

いろいろな縁が繋がって、ここまで来たというTOKYO CRITTERS。インタビュー中も、ユルさはあるものの、お互いをリスペクトしているのが伝わってきた。まだ出会っていない人は、ぜひこの機会にシブユルサウンドに触れてみてほしい。


Links

HP:https://tokyocritters.com/

Twitter:https://twitter.com/tokyocritters

 

Credits

Text:Makiko Kashio

Photo:Toru Miyamoto

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