椎名林檎の曲のオンリーワンな世界観には、多くの人が魅了されているはず。なかでも彼女の楽曲の独自の世界を作り上げているのは、日本語の妙と可能性を感じさせる歌詞の素晴らしさでしょう。そこで今回はAWAで聴ける曲のなかから、歌詞がひときわ光る椎名林檎の曲たちを集めてみました。もはや文学ともいわれる、珠玉の椎名林檎ワールドにどっぷり浸かってください。
歌詞の世界がすごい椎名林檎の曲・ソロ編10選
青春の瞬き / 椎名林檎
「めざした場所へたどり着くことは、哀しくもある」という、椎名林檎の詞にしばしば設けられるテーマがこの曲にも。「今へ向かっていたあの頃で、時が止まればよかったのに……」という思いは、彼女の「ありきたりな女」という曲の歌詞の中にも垣間見えています。この曲は男性目線で、「ありきたりな女」は女性目線で書かれた歌詞ですが、同じ世界を生きる男と女の歌とも言えそうですね。
https://s.awa.fm/track/ff4e55d2ce7d089ec994/
歌舞伎町の女王 / 椎名林檎
昭和のB級映画の世界を思わせるような物語が、短い曲のなかで短編小説のように目まぐるしく展開されていきます。あくまで事実や実体験ではない架空の世界で、運命に翻弄される女の生きざまを抒情的かつ赤裸々に綴る歌詞を、デビューしたばかりの新人女性シンガー自身が書いていたことには当時誰もが驚きました。
https://s.awa.fm/track/c544a893dbbd2831c975/
丸ノ内サディスティック / 椎名林檎
デビューに向け下積み生活をしていた頃の椎名林檎自身の姿を投影したような、私小説的な歌詞が異色のナンバー。欲しいギターも買えず、この先の見通しはまるで立たないけれど妄想に近い夢だけはまだ見られる限りこのまま暮らせる…… という「ちょっと周りから浮いているOL」っぽい歌の主人公に、椎名林檎が愛情をこめて自らの当時の夢を見せているようですね。
https://s.awa.fm/track/2e14dd0e3f4ff4474518/
人生は夢だらけ / 椎名林檎
大人なら誰でも共感できそうな難しくない言葉で書かれた歌詞ですが、椎名林檎自身も「お母さんたちに聴いてほしい」と語っているように、目まぐるしく日々を過ごす忙しい母≒がんばる女性たちへのメッセージソングと解釈できますね。そう思って聴くと、「私の人生 誰のものでもない」というフレーズは圧巻。
https://s.awa.fm/track/ff4e55d0cb700d9ec994/
罪と罰 / 椎名林檎
椎名林檎自身が過密スケジュールで体調を崩してしまったときに、自省的になりすぎてこの曲が生まれてしまったというエピソードで知られるナンバー。「罪=言うことを聞かず欲張りすぎたこと」、「罰=病気になってつらかったこと」を表しているよう。この先どうなるのだろう、こんな自分を認めてもらえるのだろうか……など、さまざまな葛藤を体験した休養中の日々に感じた不安、そして見た夢や空想の世界がすべてこの1曲の歌詞に詰め込まれているように感じられます。
https://s.awa.fm/track/a7bb56b9f94f07e0f681/
ありあまる富 / 椎名林檎
「富って何だろう。お金や持ち物のことかな?」と、タイトルを初めて見て思った方は多いはず。でも歌詞を読んでいくと、人間をもっとも豊かにしてくれる本当の富とは、実はお金なんかでは手に入れられないものばかりなのだ、という哲学的なメッセージが込められています。時の流れに対する思いを歌うことの多い椎名林檎だけに、ここで言われている富とは「時間」や「人生そのもの」のことなのかもしれません。
https://s.awa.fm/track/e7b1253a7dbccf26c858/
正しい街 / 椎名林檎
ファーストアルバム『無罪モラトリアム』のトップを飾るドラマチックな曲。歌に登場する街は歌詞にあるとおり、椎名林檎の地元である福岡のことでしょう。見慣れた百道浜、室見川、恋していた彼、全部があった福岡。それらが何ひとつない東京へ出ていってしまった後悔と、決して後戻りできないという覚悟がないまぜになった複雑な感情のまま曲は終わり、それがそのまま「シンガー・椎名林檎」の幕開けとなるような大きな物語性を感じさせます。
https://s.awa.fm/track/b5ba487a84bcf280a916/
カーネーション / 椎名林檎
カーネーションというタイトルですが、カーネーションの花は歌詞には出てきません。しかし、曲の最後の歌詞で「本当に欲しいもの」はただ1つだけと歌っています。カーネーションは母親の象徴であり、花言葉は花の色で異なりますがすべて「愛」にまつわるもの。この曲は、どんなに何かに翻弄されても命ある限りただ1つの愛を守り抜く、母の強さを歌っているのかもしれません。
https://s.awa.fm/track/43ba05d1099ed57cd040/
月に負け犬 / 椎名林檎
デビューをめざし曲を作っていた頃の椎名林檎が、自分が描きたい世界観を頭ごなしに否定されたくやしさから書いたとされている曲です。また、そのとき「自分は大きな力に屈する負け犬なのか」と、強烈なショックを受けた経験がそのままタイトルになっているともいわれています。思いを貫きたい、いつどうなるか分からないこの世界で後悔したくないという当時の葛藤が、そのまま曲になることはやっぱり凄いなと思わせますね。
https://s.awa.fm/track/a4ba9bb919b505916a01/
自由へ道連れ / 椎名林檎
ドラマの主題歌として制作された曲で、ドラマの主人公はあらゆるモノや人に執着しない「自由な存在」として描かれていました。そんな自由の象徴のような彼が周りを動かしていくというストーリーの世界観ともリンクさせながら、みんな生きている限り存在するあらゆる束縛から離れ、自由を手にしたいんだという思いを歌っているようです。
https://s.awa.fm/track/1b01fbc98b400a729e43/
歌詞の世界がすごい椎名林檎の曲・バンド/コラボ編6選
キラーチューン / 東京事変
冒頭に出てくる「贅沢」というワードは、椎名林檎のソロ曲「ありあまる富」の「富」にも通ずるものと解釈できそう。ここでの贅沢も、やはりお金やモノでは満たすことのできない何かだと推測できますね。それが「貴方」という大切な存在であり、「1度きりの今日」というとっておきの時間なのでしょう。
https://s.awa.fm/track/c41c7630a02cfb747736/
おとなの掟 / Doughnuts Hole
「おとなは白黒つけてはいけない生き物」でありながらそのタブーから解放されたいと願い、それでもやはり掟を破れないゆえの孤独にさいなまれ生きる「おとなの苦悩」を描いています。おとなになると、確かに誰に対してもかんたんに「好き」「嫌い」とは言えないもの。それを言ってしまえば、人間関係や社会的立場が滅びてしまうかもしれない「呪文」というたとえが秀逸ですね。
https://s.awa.fm/track/1b9614931110bbce8073/
透明人間 (アルバムバージョン) / 東京事変
噂や秘密でどす黒くなってしまった現代の世の中を案じながら、自分は透明な存在として生きていきたいという願いを歌っている曲。透明人間とは周りに流されない理想的な人間の姿なのか、それともまだ何色にも染まっていない子供の姿なのか……と、さまざまな想像がはかどりますね。「もっと透けていたい」というフレーズからは、大人になり切れない大人たちの姿もなんとなく思い浮かんできます。
https://s.awa.fm/track/18807b3c6339f75b5364/
閃光少女 / 東京事変
「今は生き抜くもの」という、椎名林檎の詞の世界での一貫した価値観が垣間見える曲。少女が大人になるまでのとても短い時間を「閃光=フラッシュ」にたとえ、「写真のフラッシュなど浴びなくても今なら、今だけは自分の力で輝ける」と歌っているようです。目や耳や心で精いっぱい今を感じ、一気に駆け抜けてしまおうという潔さが伝わってくる1曲です。
https://s.awa.fm/track/9f9dafd605328f6d0927/
獣ゆく細道 / 椎名林檎と宮本浩次
コラボするならできるだけ意外性に富んだ人を選びたいという椎名林檎が、エレファントカシマシ・宮本浩次と初コラボした衝撃のナンバー。人は獣でもあるのだから、取り繕うことなく感じるまま生きていきたいという思いは誰にでもあるはず。でも、獣の道は細道ゆえ、そこを死ぬまで駆けて行ける勇気が必要なんだ…… という願いを、絶唱に託したデュエットは圧巻。
https://s.awa.fm/track/43ba06dd0b9cd37cd040/
目抜き通り / 椎名林檎とトータス松本
銀座の街を舞台に、「この街で、ショーのように華々しく生きていこう」という思いを歌った昭和歌謡風のゴージャスなナンバー。初コラボしたトータス松本も、銀座の街が持つ本来の魅力である「気っ風の良さ」が感じられるキャラクターで、ベストなマッチングですね。「いのちの使いみちはほんの一瞬」という内容のフレーズにも、まさに「大事にすべきものは今ある一瞬」という、椎名林檎ワールドに共通するテーマが思い浮かびます。